老人と海|「人事を尽くして天命を待つ」天命は必ず我を味方するのか

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読書のキロク

新潮文庫から発行されている「老人と海」。

サムネイルとして使用しているのは1966年に発行された福田恆存さんが翻訳されたものですが、現在は新訳として高見浩さんが翻訳されたものが発行されています。

また、2021年にはヨルシカさんが文学作品をオマージュされ、この老人と海も楽曲化されました。

同時に、限定カバー本も販売され今も愛される作品となっています。

さて、そんな今もなお多くの人に愛され続ける「老人と海」。

お話の構成がシンプルだからこそ、そのシンプルさをシンプルで終わらせないヘミングウェイの表現力に存分に浸れる物語。

毎日が新しい日なんだ。運がつくに越したことはない。

でも、おれはなにより手堅くいきたいんだ。それで、運が向いてくれば、用意はできてるっていうものさ。

(P27より)

「老人はライオンの夢を見ていた。」が有名な一文ですが、私が好きなのはこの一節。

多くのことを経験してきた老人でも、八十四日間の不漁に見舞われるうちに運がないことを嘆くようになります。

そんな自分に喝を入れるようにつぶやいたのがこのセリフ。

嘆きたくなる老人の気持ちも、それを自分で戒める気持ちもすごくよくわかる。

「人事を尽くして天命を待つ」

この老人がそうして生きる生き様を私は心から尊敬するし、結局私もそれでしか生きられない。

そうする方が心地がいい。

本について

書名   老人と海

著者   ヘミングウェイ/ 訳・福田 恆存

出版社  新潮文庫

発行   1966年6月15日

ジャンル 海外文庫

版型   文庫

ページ  134

価格   320円(当時)

ISBN   4-10-210004-0

作者

ヘミングウェイ(Hemingway,Ernest)

(1899-1961)シカゴ近郊生れ。1918年第1次大戦に赤十字要員として参加、負傷する。1921年より1928年までパリに住み、『われらの時代』『日はまた昇る』『男だけの世界』などを刊行。その後『武器よさらば』、短編「キリマンジャロの雪」などを発表。スペイン内戦、第2次大戦にも従軍記者として参加。1952年『老人と海』を発表、ピューリッツア賞を受賞。1954年、ノーベル文学賞を受賞。1961年、猟銃で自裁。

福田 恆存(ふくだ つねあり)

(1912-1994)東京本郷に生まれる。東京大学英文科を卒業。中学教師、編集者などを経て、日本語教育振興会に勤める傍らロレンスの『アポカリプス』の翻訳や芥川龍之介論などの文芸評論を手がける。戦後は、評論『近代の宿命』『小説の運命』『藝術とはなにか』『人間・この劇的なるもの』『私の幸福論』『平和の理念』等を刊行。また、国語問題に関して歴史的仮名遣い擁護の立場で論じた『私の國語教室』がある。訳業に『シェイクスピア全集』(読売文学賞受賞)の他、ワイルド、ロレンス、エリオット、ヘミングウェイ作品等がある。劇作家、演出家として劇団「昴」を主宰し、演劇活動も行なう。全集に『福田恆存全集』『福田恆存翻訳全集』がある。

うらすじ

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが――。

自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。

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