読書のキロク
この本を読んだ1ヶ月後、広島県庄原市にある「ウィー東城」を訪ねた。
実際に自分の目でその書店をみたかった。この足でぐるっと回りたかったし、紙から感じたそのぬくもりを肌で感じたかった。
やっぱり、人肌くらいにあたたかくて心地いい。
この本を読んでいる間はゆっくりと時間が進んでいるような感覚で、時折、過去の自分が救われていくような気持ちになった。
ウィー東城店については、こちらでとても素敵に取り上げられているのでぜひ:)
そんなウィー東城店は、ある日、ご近所さんで「学校に行けなくなった子の面倒を見てくれるらしい」という噂が広がった。
小さいまちでは噂というのは瞬く間に広がるもので、ひとり、またひとりと高校生がアルバイトに来ていたときのこの一節。
彼女たちは枠がしんどい。人間関係がしんどい。「こうでなくちゃいけない」という規範がしんどい。
だからぼくは、ウィー東城店で働いているあいだだけは、彼女たちに「そのままでいいよ」と伝える。
店の責任者として我慢をしてそういっているのではなく、彼女たちを見ていると、自然とそう思えてくるのだ。
そして、その「そのままでいいよ」が彼女たちの心にきちんと届いたときから、彼女たちは彼女たちとして輝く。
引用:P108-109
私も高校での不登校生活を経て今があるから、よくわかる。この高校生たちの気持ちも、こう想われる環境がある有難さも、そして、大人としてその子たちを見る佐藤さんの気持ちも。
「ゆっくり、元気になる。」
そんな帯に惹かれて買ったこの一冊は、人肌に触れたときの、あの、じんわりと身体に染み込むようなあたたかさを帯びていた。
それはきっと温度で表すのなら、ちょっと熱い38℃でも、ちょっと冷たい35℃でもなくて、自分と同じ36℃の物語。
本について
概要
書名 本屋で待つ
著者 佐藤友則 / 島田潤一郎
出版社 夏葉社
発行 2022年12月25日
ジャンル 小説・エッセイ
版型 四六判変形 / ハードカバー
ページ 206
価格 1,600円+税
ISBN 978-4-904816-43-1 C0095
作者
佐藤友則
1976年広島生まれ。大阪商業大学中退。
愛知の書店チェーン「いまじん」にて修行後、2001年よりウィー東城店に勤務。現在、株式会社総商さとう代表取締役。
島田潤一郎
1976年高知県生まれ。日本大学商学部卒業。
2009年に株式会社夏葉社を創業。
著書に『あしたから出版社』、『古くてあたらしい仕事』、『父と子の絆』などがある。
うらすじ
町の人たちがなんでも相談にくる広島の山間の本屋「ウィー東城店」。地域の小売店の可能性と、そこで成長する若者たちの姿を描く。ノンフィクションの物語。